黒死館殺人事件 | ||
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稀覯 | きこう | ウン、寺門義道の『紋章学秘録』さ。もう稀覯本になっているんだがね。 |
弥撒 | ミサ | Mass(弥撒)と acre(英町)だよ。続けて読んで見給え。信仰と富貴が、Massacre――虐殺に化けてしまうぜ」 |
呻く | うめく | 検事はウーンと呻き声を発して、思わず銜えていた莨を取り落してしまった。 |
呪詛 | じゅそ | ウイチグス呪法典はいわゆる技巧呪術で、今日の正確科学を、呪詛と邪悪の衣で包んだものと云われているからだよ。 |
錣 | しころ | 向う側にあるのは全部吊具足(宙吊りにしたもの)だが、二番目の鞣革胴の安鎧に載っているのは、錣を見れば判るだろう。 |
丁抹 | デンマーク | いや、トムセン(丁抹の史学者。バイカル湖畔南オルコン河の上流にある突厥人の古碑文を読破せり)で結構さ |
瑞西 | スイス | 「そうすると、貴方はあの瑞西の牧師と同様に、人間と動物の顔を比較しようとなさるのですか」 |
つっけんどん | 法水は依然熊城から眼を離さず、突慳貪に云い放った。 | |
蝙蝠 | こうもり | ところで、その告げ口をするという蝙蝠ですが、いったいそれは、どっちの端にいたのですか」 |
合歓 | ねむ | 向う側の中央にある合歓樹(ねむのき)は、火星の表徴になっているのだ。 |
諧謔 | かいぎゃく | ところが、法水の諧謔は、けっしてその場限りの戯言ではなかった。 |
投擲 | とうてき | ベーコンの投擲弾を考えると、そこに技巧呪術の本体が曝露されなければならない。 |
木乃伊 | みいら | そして、顔だけを除いて、全身を木乃伊のように毛布で巻き付けられているのだった。 |
訝る | いぶか(る) | しかもまた訝しいことには、そのBanthriceを口にした時に、貴方はいきなり顔色を失ってしまったのです。 |
縅 | おどし | また、こっちの方は、黒毛の鹿角立という猛悪なものが、優雅な緋縅(ひおどし)の上に載っている。 |
海豚 | いるか | かえって僕は、アリオンを救った方が、音楽好きの海豚の義務ではないかと思うのですよ」 |
埃及 | エジプト | 「埃及の大占星家ネクタネブスは、毎年ニイルの氾濫を告げる双魚座を、 |
鑿 | のみ | まるで鑿ででも仕上げたように、繊細をきわめた顔面の諸線は、 |
天鵝絨 | ビロード | 帷幕に触れると、咽っぽい微粉が天鵞絨の織目から飛び出してきて、 |
慇懃 | いんぎん | 博士は、法水を見ると慇懃に会釈して、 |
忸怩 | じくじ | 「うん、まさに小気味よい敗北さ。実は、僕も忸怩となっているところなんだよ」 |
齎す | もたらす | この片々たる一冊が、はたして何ものを齎そうとするのだろうか!? |
毟る | むしる | 彼は絶えず、小びんの毛を掻き毟っては荒い吐息をつき、 |
洋琴 | ピアノ | つまり、水滴を洋琴の鍵にして、毛が輪旋曲を踊ったのだよ」 |
乾坤 | けんこん | まさに彼が、乾坤一擲の大賭博を打たんとしていることは明らかだった。 |
落魄 | らくはく | 六代後の落魄したベルトランが、今度は花柳病者に同じ事をやろうとしたそうだ。 |
寄生木 | やどりぎ | それはまだしもで、私は寄生木とまで罵られたのですわ。 |
嘯く | うそぶく | 法水は烟の輪を天井に吐いて、嘯くように云った。 |
齣 | こま | 久我鎮子が提示した六齣の黙示図は、 |
西班牙 | スペイン | 西班牙セヴィリアの宗教裁判所に、糺問官補のフォスコロという若い僧がいたのだ。 |
白蟻 | ||
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韜晦 | とうかい | またそうなっても、自分だけはけっして驚かされまいとする―― 一種の韜晦味などを求めていたけれども、 |
鉄漿 | おはぐろ/かね | もう時江は、自分自身でさえも、その媚めいた空気に魅せられてしまって、鉄漿(かね)をつける小指の動きを、どうにも止めようがなくなってしまった。 |
辷る | すべ(る) | その後明暦三年になると、この地峡に地辷りが起って、とうにそのときは土化してしまっている屍の層が露き出しにされた。 |
完全犯罪 | ||
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芬蘭 | フィンランド | その名は三つとも、芬蘭やエストニア辺には有る事ですわ」 |
牛津 | オックスフォード | 牛津の人類学者ヒュー・ローレル教授の研究設備である。 |
倶利伽羅信号 | ||
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蛞蝓 | なめくじ | 右から数えて大蛇丸、蟇の児雷也、蛞蝓の綱手となって、 |
鞦韆 | ブランコ | 祥の乗っている鞦韆の右綱が切れるんだ。 |
ナポレオン的面貌 | ||
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忌憚 | きたん | 彼ケレンスキーの印象を忌憚なくいってみるに……、 |
縹渺 | ひょうびょう | 磯蘭の咲く道べから急傾斜に渚に落ちてゆく砂堤のうえにたち、縹渺たる海をながめていた。 |
人魚謎お岩殺し | ||
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膏肓 | こうこう | 阿片食も病い膏肓に入ると、昇汞を混ぜなければ、陶酔ができなくなる。 |
昇汞 | しょうこう | 阿片食も病い膏肓に入ると、昇汞を混ぜなければ、陶酔ができなくなる。 |
潜航艇「鷹の城」 | ||
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寸毫 | すんごう | それにはまず、吾々は艇長に対し寸毫の敵意さえもなかったことが云われます。 |
維納 | ウィーン | あの維納(ウイン)の鉄仮面――ヘルマンスコーゲルの丘に幽閉されている囚人が、実はそうなのでございます」 |
俤 | おもかげ | そこを墓とする、武人の俤を偲んでいるようであった。 |
辻褄 | つじつま | 「なるほど、辻褄は合うがね。だが僕は、君の云うような、安手な満足はせんよ。 |
三鞭酒 | シャンパン/シャンペン | しかも、そのまっ暗な、水面下三百呎のしたでは、シュトラウスのワルツが響き、三鞭酒(シャムパン)の栓がふっ飛んでいるのである。 |
呎 | フィート | しかも、そのまっ暗な、水面下三百呎のしたでは、シュトラウスのワルツが響き、三鞭酒の栓がふっ飛んでいるのである。 |
蠱惑 | こわく | そうして語られる夢の蠱惑は、ウルリーケの上で、しだいと強烈なものになっていったが、 |
人外魔境 水棲人(インコラ・パルストリス) | ||
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瀟洒/瀟灑 | しょうしゃ | きょうは、瀟洒な外出着であるせいか、白いロイスがいっそう純なものにみえる。 |
人外魔境 天母峰(ハーモ・サムバ・チョウ) | ||
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瓔珞 | ようらく | みると、耳飾塔や緑光瓔珞をたれたチベット貴婦人、 |
人外魔境 有尾人(ホモ・コウダッス) | ||
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瞋恚 | しんい | それまでは、ヤンとあの夜の狂態はなんだと、彼はマヌエラに瞋恚の念を燃やしていた。 |
人外魔境 遊魂境(セル・ミク・シュア) | ||
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罩める | こめる | 海霧たち罩める、海面を飛びかうよう海鴎やアビ鳥。 |
オフェリヤ殺し | ||
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諾威 | ノルウェー | 末には諾威の王子フォーティンプラスとも通謀して、ハムレット亡き後の丁抹を、彼の手中に与えてしまうのである。 |
衒気 | げんき | 然し、決してそれは、衒気の沙汰でもなく、勿論不思議でも何んでもないのである。 |
凭れる | もたれる | 支倉検事と熊城捜査局長が椅子に凭れていた。 |
聖アレキセイ寺院の惨劇 | ||
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吝嗇 | りんしょく | そして、芯だけになったのに、吝嗇なラザレフが点したとすると、 |
玻璃 | はり | 果してルキーンの云う通り、最初小鐘が明朗たる玻璃性の音響を発し、続いて荘厳な大鐘が交った。 |
失楽園殺人事件 | ||
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怪訝 | けげん | 「成程、失楽園の一員に……」法水も怪訝そうに眉間を狭めると、 |
後光殺人事件 | ||
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俥 | くるま | 「ハハァ、鉄輪の俥があった頃の趣味だね」と法水は初めて朔郎に声を掛けた。 |
兜率天 | とそつてん | 今に兜率天から劫火が下って薬師如来の断罪があるだろう―― |
木賊 | とくさ | 法水の友人で、胎龍と並んで木賊派の双璧と唱われた雫石喬村の家が、劫楽寺と恰度垣一重の隣にあって、 |
面皰 | にきび | ――何んでも、自分の身体の中から侏儒の様な自分が脱け出して行って、慈昶君の面皰を一々丹念に潰して行くのです。 |
鏨 | たがね | それに、鏨と云われて探してみると、もう一本あったのが何時の間にか紛失しているのですが、 |
夢殿殺人事件 | ||
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頗る | すこぶる | 大体油時計そのものが、頗る温度に敏感であって、 |
紅毛傾城 | ||
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こめかみ | 鉄の輪が、いつもを締めつけているように感じ、舌は、熱病のような味覚を持っていた。 | |
裲襠 | うちかけ | しかし、夜になると、二人は抱き合って、裲襠の下で互いに暖め合うのであるが、 |
二十世紀鉄仮面 | ||
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猖獗 | しょうけつ | 猖獗地に近い、劇場や盛り場はみな大扉を下して、 |
眩暈 | めまい | 彼は、くらくら眩暈がして、 |
阿諛追従 | あゆついしょう | それとも、十八郎の精気、全能の金が勝って、再び阿諛追従者を従え横行闊歩できるか……。 |
窶れ | やつれ | 窶れの見えた顔は、いっそう神々しく見えた。 |
青い鷺 | ||
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酸漿 | ほおずき | 耳朶が、ほんのりと染まって、弁助には酸漿のように見える。 |
その他 | ||
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繁縷 | はこべ/はこべら | 『日本紅繁婁』(←編注※『二十世紀鉄仮面』の未定稿時の名前) |